ワースト・アセス・コンテスト

Worst Assessment Contest

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ワースト・アセス・コンテストが目指したもの

2012年3月22日、日本で最悪の環境アセスメントを競う「ワースト・アセス・コンテスト」を開催しました。
約10日間の応募期間にも関わらず、アセス法(1999年施行開始)に基づく6件の他、閣議了解(1972年)や閣議決定(1984年)アセスが適用され、継続中の古い事業4件、愛知県のアセス条例が適用された1件、事業者が自主的に行ったアセス4件、制度の対象外や適用外である4件、計19事業の応募がありました。

来場者による挙手による得票で最多の「大賞」に「普天間飛行場代替施設」、次点の「怒りの鉄拳賞」に「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業」が、世にも不名誉な受賞をされました。また、環境保全に取り組む市民のプレゼン能力も評価しようと特別にお願いした、クリエイティブ・ディレクターのマエキタミヤコさんの選定により、「上関原発計画」が「プレゼン賞」を受賞しました。

日本のアセス法は、調査に基づいて影響予測・評価を行い、住民や自治体意見を反映して、影響を回避・軽減する制度です。
本コンテストが目指したのは、悪いアセス事例に眉をひそめることに留まらず、そこから学べる教訓を抽出し、アセス制度や運用の改善に結びつけていくことです。もちろん、悪しきアセスは、手続や計画のやり直しがなされるべきところです。

ワーストの競い合いの中では、次のような共通した問題や固有の問題が明らかになりました。
(事業名をクリックするとワースト・アセス・コンテスト実行委員会のウェブサイト上の各事業の配布資料へリンクします。)

◎法、条例、閣議了解、閣議決定アセスの運用の問題点


◎裁判が提起されている


◎制度の問題、どのようにすればよりよいアセスになるかについての指摘

  • 周辺の複数開発事業との複合的な影響評価の欠如:普天間、[徳島道路例:河口域に、複数の大型事業(2本の道路橋建設、人工海浜建設)が集中])→複数の管理者の縦割り・横割り行政を融合すべき。
  • 重要な地域の保全:生物多様性保全上重要な地域に関しては、事業の規模にかかわらずアセスを実施する。重要な地域とは、自然公園法等に基づくものに限定せず、自治体の条例や指針、民間の研究成果も含める。
  • 代替地、ゼロオプション:戦略的アセスメントを法制化する必要がある。
  • 環境影響評価の実施時期:事業実施地域の住民等がもっとも地域特性等を知っており、利害関係も深いことから、計画時からすべての情報を開示し、時間をかけて環境影響を回避することを検討すべき。結果次第では止めるという白紙状態での取り組みとすべき。
  • 対象事業種、事業規模の限定性:東京大学西東京キャンパス整備計画、[高江ヘリパッド例:直径45mの規模、位置から、沖縄県アセス条例の対象とすべきだが、自主アセスだった]、[最上小国川ダム例:湛水面積28haで大賞規模要件以下だが、アユ漁獲や釣りへ影響で経済効果10億円損失の予測あり]→アセスの対象事業種、事業規模の見直し。(軍事基地の建設も対象に加え、供用後の訓練、演習の内容、軍用機、車両、兵員、武器、他の基地との移動等もアセスの対象に含める(現行の指針等でもできないことはないが、より厳密化する)等)。→改善の必要性
  • 事業者の倫理:非常識な時間帯、方法で書類提出、調査会社の客観性。→改善の必要性
  • 専門家の役割:自治体の審査会等の第三者性の確保、氏名を公開し責任を取る専門家の関与。
  • アセス法制定以前の古い計画における閣議アセス:八ッ場ダム湯西川ダム利根川水系思川開発事業犀川総合開発事業辰巳ダム例:住民・自治体意見の記述がない。アセス実施後、長期が経過。当時の状況が不明。膨大な調査データが蓄積されるが、考察や影響予測はされていない]→社会状況も変わり、データが古くなっていることから、再度アセスを実施する必要がある。
  • 罰則:アセス逃れその他、アセスを正当に行わないものに対して罰則を設ける。
  • アセスの以前の必要性検討:政策決定過程で必要性に関する十分な検討が不可欠。(八ッ場ダム湯西川ダム利根川水系思川開発事業犀川総合開発事業辰巳ダム徳島道路例:交通計画のアセスメント自体に大きな問題があり、道路の利用需要の予測および費用対効果の十分な検証が必要)

上記の他、事業者が事業地を入手していない段階で、知事が上関原発を「国のエネルギー基本計画」へ位置づけることに同意したアセス以前の問題や、沖縄県で知事が異論を唱える事業(普天間飛行場代替施設)と推進する事業(新石垣空港)では知事のアセスへの対応に差違があるとの指摘や、国交省令で影響範囲を根拠不明のままダム湛水範囲の3倍長としている(設楽ダム)など事業種固有や地域固有の問題も指摘されました。

アセス法は、方法書手続、準備書手続、評価書手続の他、2011年改正法により配慮書手続が加わります。具体的な手続が施行令、省令等で決まるため、その仕組みは複雑で一般には馴染みがなく、適用される事業種も規模も限定的である上、制度への関心も期待値も低く、指摘・改善されるべき問題が顕在化しにくいという課題がありました。

しかし、本コンテストの実施により、事業横断的および固有の問題が浮かび上がってきました。ワースト・アセス・コンテスト実行委員会としては、これらの課題をより分かりやすくして、政策決定者、関係学会、ステークホルダー、報道関係者および一般市民に共有し、さらなる改正を目指したいと考えています。
 

バーチャルチラシ

2012年第1回ワースト・アセス・コンテストのバーチャルチラシです。ボタンを押すと別窓が開きます。
(エントリーは3月5日で締め切りました。)

↓ 印刷用は下記からどうぞ。

【印刷用PDF】チラシ画像

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